生成AIで作った画像・文章、著作権は大丈夫? 中小企業が決めるべき社内ルール
この記事のポイント
- 文化庁は生成AIによる著作権侵害を「類似性」(表現の本質的特徴が直接感得できるか)と「依拠性」(既存著作物を知って利用したか)の2要件で判断するとしている
- 「〇〇風のタッチで」のように特定の作家名・作品名をプロンプトに含める行為は、依拠性を自ら証明する証拠になり得るため避けるべき
- 経済産業省・総務省のAI事業者ガイドラインは2026年3月31日に第1.2版へ改定され、AI利用者には人間の判断の介在や機密情報の入力防止などが求められている
- 2025年8月には読売新聞社がPerplexity AIを相手取り約22億円の損害賠償を求めて提訴、同年11月には千葉県警がAI生成画像の無断複製で全国初の書類送検を行うなど、著作権トラブルはすでに現実化している
- 実務では「入力してはいけない情報」「出力の類似性チェック」「人間が最終判断する業務の線引き」など、最低限決めるべき社内ルールが複数ある
- 生成AIの著作権リスクと情報漏洩リスクは別物であり、それぞれ別の社内ルールとして整備したほうが運用が形骸化しにくい

生成AIで作った画像や文章の著作権侵害リスクは、「類似性」と「依拠性」という2つの要件で判断されます。文化庁は、生成物が既存の著作物と表現として似ているかという「類似性」に加え、既存作品を知った上でそれをもとに作ったといえるかという「依拠性」の両方が認められた場合に、著作権侵害が成立するとしています。「〇〇風のタッチで」と特定の作家名を指示に含める行為は、この依拠性を自ら証明する証拠になり得るため、社内ルールとして明確に禁止しておくべきです。
「著作権は大丈夫か」という漠然とした不安
生成AIを業務で使い始めた企業の多くが抱くのが、「この画像・文章をこのまま使っても著作権的に問題ないのか」という漠然とした不安です。一方で、情報漏洩対策のように「入力してはいけない情報」を決めるだけでは、著作権リスクはカバーしきれません。著作権の問題は、入力時の指示の仕方と、出力後の確認体制の両方に関わってくるためです。
依拠性・類似性という2つの判断軸
文化庁が2024年3月に公表した「AIと著作権に関する考え方について」では、AI生成物が既存の著作物の権利を侵害するかどうかを、次の2要件で判断するとしています。
- 類似性: 既存の著作物が持つ表現上の本質的な特徴を、生成物から直接感じ取れるかどうか。単にアイデアやジャンルが似ているだけでは類似性は認められません。
- 依拠性: 既存の著作物を知った上で、それをもとに作られたといえるかどうか。プロンプトに特定の作品名・作家名を指定する行為(「〇〇風のタッチで」など)や、既存作品をそのまま画像入力として使うImage-to-Imageの手法は、依拠性が明確に認められやすい典型例です。
この2要件がどちらも満たされたときに、著作権侵害として法的責任を問われるリスクが生じます。逆に言えば、依拠性を生じさせない使い方を徹底することが、実務上のリスク低減に直結します。
著作権侵害リスクが高まる具体的な使い方
以下のような使い方は、依拠性が認められやすく特にリスクが高い運用です。
- プロンプトに特定の作家名・作品名・キャラクター名を含めて「〇〇風に」と指示する
- 競合他社の記事や既存コンテンツをそのままAIに入力し、リライトさせる
- 既存の画像をImage-to-Image機能に読み込ませて類似構図の画像を生成する
こうした使い方は、本質的な表現が残っていれば翻案権の侵害にあたる可能性が高く、業務フローから明確に排除しておく必要があります。
「まだ他人事」ではない。国内で実際に起きているトラブル
生成AIの著作権問題は理論上の話にとどまりません。国内でも次のようなトラブルがすでに表面化しています。
時期 | 内容 |
|---|---|
2025年8月 | 読売新聞社が、生成AI検索・要約サービスを提供する米Perplexity AIを相手取り、約22億円の損害賠償を求めて提訴 |
同時期 | 朝日新聞社・日本経済新聞社も、著作権侵害および不正競争行為を理由に44億円の損害賠償を請求 |
2025年10月31日 | コンテンツ産業関連団体が、OpenAIの映像生成AI「Sora 2」のオプトアウト方式(学習利用を拒否しない限り自動的に許諾したとみなす方式)を著作権法の原則に反すると批判する共同声明を発表 |
2025年11月20日 | 千葉県警が、生成AI画像を無断で複製し書籍の表紙に使用した男性を著作権法違反で書類送検。AI生成画像に著作権を認めた全国初の摘発事例 |
※2026年2月時点で、日本国内の生成AI著作権侵害をめぐる確定判決はまだ出ていません。ただし千葉県警の書類送検事例が示すとおり、AI生成物の無断複製・流用は、判決を待たずにすでに刑事責任へ発展し得る段階に入っています。「学習データとして使われた側」だけでなく、「生成物を無断で流用する側」としての著作権侵害も現実のリスクであることが分かります。
社内ルールとして最低限決めるべきこと
著作権リスクを抑えるための社内ルールとして、最低限次の項目を明文化しておくことが実務的です。
- 入力・指示の禁止事項: 特定の作家名・作品名・キャラクター名をプロンプトに含める運用を禁止する。
- 公開・納品前の類似性チェック: 生成した画像・文章を社外へ公開、またはクライアントへ納品する前に、既存の著作物との類似性がないかを確認する手順を必須にする。
- 生成記録の保管: 疑義が生じた際に自らの創作的寄与と非依拠性を説明できるよう、生成時のプロンプト・使用ツール・生成日時を記録・保管する。
- 人間が最終判断する業務の線引き: 著作権の該非判断や公開可否の最終確認は、必ず人間が担当する業務として切り分ける。
経済産業省のAI事業者ガイドラインとの関係
経済産業省・総務省は2026年3月31日、「AI事業者ガイドライン」を第1.2版に改定しました。同ガイドラインはAIに関わる主体を「AI開発者」「AI提供者」「AI利用者」に大別して整理しており、AI利用者に対しては、提供者が想定した範囲での利用、適切なデータ入力、出力の精度やリスクの確認、そして人間の判断を介在させることの重要性を示しています。
このガイドライン自体に法的拘束力はありませんが、著作権リスクへの対応を含め、社内ルールを設計する際の実務的な参照点になります。
業務別の注意点
- マーケティング・広報: SNS投稿画像やバナー制作でのImage-to-Image利用は、参照元著作物の扱いに特に注意する。
- コンテンツ制作・記事作成: 競合コンテンツをそのまま入力してリライトする運用は避け、要点を自社の言葉で再構成する指示に留める。
- 営業資料・提案書作成: 他社の資料デザインを模倣する指示(「〇〇社の資料のようなデザインで」等)も依拠性が生じやすいため避ける。
情報漏洩対策の社内ルール整備については、生成AIの業務利用における情報漏洩対策を整理した記事もあわせてご参照ください。著作権対策と情報漏洩対策は目的も確認ポイントも異なるため、別建てのルールとして運用することをおすすめします。
まとめ
生成AIの著作権リスクは、「類似性」と「依拠性」という2つの判断軸を理解し、依拠性を生じさせない使い方(特定作家名・作品名を指示に含めない等)を徹底することが最も効果的な対策です。加えて、公開前の類似性チェックと生成記録の保管を社内ルールとして明文化しておくことで、疑義が生じた際にも説明できる体制を作れます。情報漏洩対策とは別の観点であることを意識し、それぞれ独立したルールとして整備してください。
※本記事の法制度に関する情報は2026年7月26日時点で確認できた公開情報に基づきます。個別の事案の該非判断は、必要に応じて弁護士等の専門家にご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q.生成AIで作った画像や文章に著作権侵害のリスクはありますか?
A.単純なプロンプトで生成した画像や文章自体には原則として著作権が発生しませんが、既存の著作物と「類似性」(表現が客観的に似ているか)と「依拠性」(既存作品を知って利用したか)の両方が認められる場合、著作権侵害として法的責任を問われるリスクがあります。
Q.どんなプロンプトの使い方が特に危険ですか?
A.「〇〇(特定の作家名や作品名)風のタッチで」といった指示は、既存作品を認識した上で利用したことの証拠になり得るため、依拠性が認められやすくなります。社内ルールとして明確に禁止しておくべき使い方です。
Q.中小企業でもAI事業者ガイドラインへの対応は必要ですか?
A.ガイドライン自体に法的拘束力はありませんが、AI利用者に対して人間の判断の介在や機密情報の入力防止などの実務指針を示しています。規模に関わらず、最低限の社内ルールを整備する際の参考になります。
Q.情報漏洩対策と著作権対策は同じルールでカバーできますか?
A.別物として扱うべきです。情報漏洩対策は「何を入力してはいけないか」が中心ですが、著作権対策は「どう指示し、生成物をどう確認・記録するか」が中心になります。1つのルールに詰め込むと運用が形骸化しやすいため、別建てで整備するのが実務的です。
その他のご不明点がある場合は、お問い合わせページからご連絡ください。
購入前チェックリスト
ご購入前に、以下の項目をチェックして最適な製品選びをしましょう。
- プロンプトに特定の作家名・作品名・キャラクター名を含める運用を禁止しているか
- 生成物を社外公開・納品する前に、既存著作物との類似性を確認する手順があるか
- 生成時のプロンプト・使用ツール・生成日時を記録し、疑義発生時に説明できる体制があるか
- 競合他社の記事や既存コンテンツをそのままAIに入力してリライトさせる運用をしていないか
- 著作権リスクと情報漏洩リスクを分けて、それぞれ担当・確認ポイントを明確にしているか
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